鈴芽戸締 - Travis

映画批評には大いに主観的な要素が含まれています

まず結論から言いますと、この映画は 7 割の商業映画としてはかなり良い出来です。映像や音楽には文句のつけようがありませんし、今回の新海誠作品は味わい深い延べ撮りの撮影が相変わらず魅力的で、むしろさらに熟練しています。
しかし、この作品は新海誠にとっての失敗作であり、すべてを兼ね備えた集大成となることを目指した試みです。

日本のポスター

今回のストーリー設定について話しましょう。新海誠が表現したかったのは、災害後の復興と、災害に遭った人々が心の闇から抜け出す方法です。
意図は素晴らしいのですが、表現があまりにも隠れすぎていて、この意図を理解するには観客が多くの外部情報を持っている必要があり、共感を見つける必要があります。
私のように外部情報が不足している人間にとっては、災害や日本の危機意識に共感することができず、主題の表現が全く理解できません。
災害を伝える商業映画は雅俗共赏（庶民と文人の双方に受け入れられること）であるべきであり、外部情報のない観客を排除すべきではありません。

2 つの例を挙げます：

中国の「白蛇：縁起」では、IMDB の評価には法海がなぜ白蛇を封印しなければならないのかが理解できないという意見が多くあります。白蛇伝の物語は明らかに外部情報が必要です。
「大聖归来」では、中国人は孫悟空が大好きですが、外国人にとっては彼の認識は「ドラゴンボール」の悟空によるものかもしれません。

また、時間の輪廻といった機械的な神秘的な展開は少なくしてほしいです。それでは物語が推敲に耐えられなくなってしまいます。
比較すると、ピクサーやハリウッドのアニメ映画は、ブレインストーミングのような創造的なプロセスで設定を先行させ、キャラクターや環境を確立し、環境の刺激や変化を与えることで、ストーリーが自然に成長し、爆発します。このような機械的な神秘的な展開はほとんどありません。

最後に、感情の展開があまりにも唐突です。前作では高速なモンタージュ編集を使って多くの日常を短時間で表現し、キャラクター間の感情が急速に高まっていきました。
しかし、本作では男性主人公と女性主人公の好感度が異常に速く上昇しています。女性主人公の動機が理解できないと感じることは避けられません。
私の視聴時の直感は、感情の線が脚本が完成した後に資金提供者の要求で追加されたように感じました。鑑賞後、ネット上のコメントを見ていると、同様の噂を目にすることもありますが、真実かどうかはわかりません。

新海誠の映画は常に苦い青春の感覚を与えてくれます。高校時代に「君の名は。」を見たときはいつも心が重くなりましたが、最近再び見直してみると、以前の感覚はありませんでした。そして、「鈴芽戸締」を見終わった後、友人たちと激しい議論をしたとき、1 人の友人が次のような言葉を口にしました。

「桜花抄 / 秒速 5 センチメートル - 君の名は.- 天気の子」を代表として、新海誠の恋愛表現は青春期の曖昧な感情を表していますが、青春期を経て見識が広がり時間が経つにつれて、この感情も平凡になることに気づいたとき、熱烈な感情の記憶を忘れることへの恐怖が、青春を失う苦しみとなります。初めて「君の名は。」を見た後、私は将来も誠兄の作品を同じ心境で見続けたいと思っていました。忘れたくない、忘れたくないと。しかし、今日、自分自身と和解する時が来たのかもしれません。

青春は儚く、新海誠もかつての新海誠ではありません。おそらく彼自身が自分の作品にこのような青春の感情を明示的に見つけた後、この作品で変化を起こそうとしたのでしょう。
しかし、彼が求めたものはあまりにも多く、災害の下での自己との和解を表現したいと同時に、男女の愛や過去への追求も表現したいと思ったのでしょう。これらは確かに有機的に結びつけることができますが、本作ではうまくいっていないため、私は分断されたと感じました。